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高松高等裁判所 昭和61年(ラ)13号 決定 1986年5月13日

抗告人 直原雅代

相手方 岡村素行

右代理人弁護士 横田聰

右相手方の申立てに係る高知地方裁判所昭和六一年(ヲ)第一四号代替執行申立事件、同年(ヲ)第一五号代替執行費用支払申立事件について、同裁判所が同年二月一四日なした代替執行及び代替執行費用の支払の各決定に対し、抗告人から執行抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙のとおりである。

所論は、要するに、別紙物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)の最低売却価額決定の基礎となった評価人の評価は、あらかじめ、同目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)の収去に要すべき費用として一七七万円が減額され、買受人による同金額の受領がなされることになっていたから、これを看過してなされた原決定は、相手方を不当に利得させるものであって違法であるというのである。

そこで、記録を調査して検討するに、右評価人の評価は、本件土地を競売した後に本件建物が残ることによって生ずる支障、買受人の負担を考慮して更地価額から所論金額の減価をしているが、これは、多額の資金を投下して買い受ける本件土地の使用が、当面事実上、不可能となることによって生ずる右のような事情をマイナス要素としていわゆる市場減価を行い、強制執行の目的不動産の現況による客観的交換価値を算出したもので、所論金額中には、本件建物の収去費用として買受人の手元に保留(受領)させるべき趣旨のものが包含されていることは否定できない。しかしながら、原決定は本件土地の所有者である相手方が債務名義に基づき抗告人所有の本件建物収去の代替執行をなすについてその費用の支払を命ずるものであって、これは右強制執行段階における執行費用の負担を定めたものにすぎず、たとえ、相手方が右執行費用を別個の法律関係において実質上補填を受けているとしても、これを理由に右執行費用の取立をなしえないものとすることはできず、右取立の結果生じた相手方の利得は、別途抗告人との間において調整されるべき事柄であると解するのが相当である。したがって、抗告人主張の抗告事由はこれを採用するに由ないものというべきである。

そして、記録を調査しても他に原決定を取り消すべき法令違反又は事実誤認の点は認められない。

よって、本件抗告は理由がないから、これを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高田政彦 裁判官 上野利隆 鴨井孝之)

<以下省略>

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